大学生の読書生活

ギリシャの恋愛は人間の欲望を肯定した上でそれを高めていくものである。一方、キリスト教の恋愛は動物的な欲望を悪性と廃し、動物性が浄化されるのは子孫の繁栄を目的とした結婚の時のみとしている。これに対し、日本古来の恋愛は本能+感情である。露骨に言ってしまえば一緒に寝たいという欲望、それに繊細な感情の美学が加わったものが日本の恋愛なのである。 例えば「万葉集」では美しい別離の情や、恋人に久しぶりに会った喜びなどの生活感情を素材にして愛が述べられている。また、「伊勢物語」や「源氏物語」においても、恋愛はただ感情から綴られた。このように、恋愛を哲学や騎士道と結びつけたヨーロッパと違い、日本の恋愛はそれらから隔絶した世界にあり、感情の形でだけ浄化してきた。